第二弾は

2024.07.06 #未分類

約一ヶ月間、開催していた「バクティアリ の絨毯展」は無事終了。

お納めした絨毯たちはこれからお客様宅の脚元を個性的に彩ってくれる事でしょう。

 

さて、第二弾です。

アイキャッチ画像でおわかりでしょうが、タイトルは「パラダイスな絨毯展」

 

ペルシャ絨毯のデザインを知っておられる方からは

「お〜、バーゲル・セイラフィアンのハンティング・デザインじゃん、でも何でこれがパラダイスなん?」って聞かれそうですが…

 

実はパラダイスの語源は古代アケメネス朝ペルシアのパイリダエーザ [ pairidaēza ] という語であり、原義は周囲を[ pairi ] 囲われた [ daēza ]で、王侯貴族がとくに獲物の多い土地を、自分たちの狩猟の楽しみのために囲い込んだ「猟園」を意味したとのこと。

 

なので、このハンティング・デザインの意匠はパイリダエーザ、すなわち「パラダイス」を表したものですね。

 

 

 

ちなみにこのモチーフ ↓

そう、パルティアンショット。

アケメネス朝が滅んだ後のアルケサス朝パルティアが語源で「パルティアの射撃」。

これが中国に伝わるとアルケサスは漢字で書くと「安息」から「安息回馬箭」、これが日本に伝わり「安息式射法」とも呼ばれます。

ちなみに法隆寺北倉に収蔵されている国宝「四騎獅子狩文錦」もパルティアンショット。

 

唐時代に中国か東アジアのどこかで織られたものらしいですが、冠は左右に鳥翼、三日月に太陽の日月紋、天馬に乗り、弓を放つ貴人の風貌からは、ササン朝ペルシャのホスロー二世とその愛馬をモデルにしたとの説が有力です。

帝政ローマ時代のギリシャ人著述家プルタコスも北西イランのメディアに古代アケメネス朝の王の庭園があったと記述しています。アルタクセルクセス大王はここへ来て狩猟を楽しんだそうですが、ここできっとパルティアンショットをバッチリ決めてたんでしょうね。

ちなみにそこには花が咲き乱れ、泉が湧いて流れとなり、清水がそそぎ込んだ池には、水鳥が泳ぎ、小鳥は空を飛び、動物が放し飼いされており、この庭園のことを「パイリダエーザ」と言ったとの記述があるそうです。

[参考文献:横張, 和子. わたくしのシルクロード(8). 幼児の教育. 80 1,p.36-42, https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000025-I010870000687679]

 

 

 

 

↑ そんな「パラダイスな絨毯展」ですが、パッと見は何をテーマにした絨毯展かはピンと来ないと思います。

前回は濃厚なバクティアリの絨毯の色柄が全体に漂っていたので暑苦しさと共に、なんか変わった絨毯が展示されてるなという感はあったと思うのですが、今回は見た目では統一感がないかも…

でも、このブログを読んでくれたり、会場で私の説明を聞いたりして「お〜っ納得〜」なんて、思って欲しいなと期待しています。

 

さて、このセイラフィアンのハンティングの横にはこれ。

どこの産地だかわかります? 少し素朴でカワイイ感じもするから分かりにくいと思いますけどね。

 

隣のセイラフィアンと同じイスファハン産の絨毯です。ですが、いわゆるプレ・セイラフィアン時代の絨毯で制作は1930年頃でしょうか。

もちろん縦糸はコットンです。この時代にも精緻な結びの素晴らしいイスファハンもありますが、このような家庭織に近い絨毯も魅力的。もちろん状態は抜群!かなりレアで、日本で見かけることはほとんどないと思います。

花、草、樹木、泉、池、小鳥、動物とパラダイスのエレメンツは揃っていますね。

 

その横もイスファハンです。

コルクウールが素晴らしい踏み心地、1950年代前後の無銘なもの。コンディションが良いので新しく感じる方も多いかもですが、このクオリティでサインが織り込まれていないのがポイントです。

これだけのものを制作しておきながら、「名乗るほどの者ではありませんよ」的な考え方が大好きなんです。ベースが濃いネイビーなのもとても珍しく、まるで日没後の薄明のようですね。

そう、これは薄明を英語にして「マジックアワーなパラダイス」とでもタイトルを付けようかな。そして空には経年で現れたアブラーシュ(色斑)がまるでヴィーナスベルトのようで、最高!

 

 

そして、前回のバクティアリ 展からの居残りさんが一点。

これは有名なヘシュティデザインと呼ばれる庭園文で、水路で分割された庭園に花や樹木が表現されています。

 

絨毯に乗せた椅子には小さな古いケルマン、正方形と少し長いのがセットでサイズが何とピッタリ。もちろんデザインはパラダイス。

 

バックにもケルマンのアンティークなパラダイス。

 

他にも少し古い時代のナイン産も↓

ちょっと獲物少なめかも(笑)です。こなれた感じで、あっさりした色合いはインテリア的には合わせやすいのがグッドです。

 

いつだったかのブログに登場したオールド・サルーク ↓

これまたすご〜くパラダイス感の溢れる逸品なのですが、なかなか購入しようとするチャレンジャーが現れてくれません。せっかくイラン→レバノン→イラン→日本と長い距離と年月をかけてここまで辿り着いたのですから、どうかあなたの手元に、いや脚元に是非!

 

最後にコレ、

右手前の絨毯。

なかなかコレもいい感じですよ。パラダイスなエレメンツは魚までバッチリ揃っています。とってもプリミティブでキッチュとも言える色彩を放っていますが、これはオールド・ゼンジャン。

そう言えば10年以上前にもゼンジャン産の絨毯に触れたブログも→クリックでブログへ

 

で、実はこれはペアで発掘。

何と未使用で半世紀、紫外線にも触れずでした。

 

今回はパラダイスという意匠を主眼にセレクトしましたが、絨毯自体は『どれもこれも簡単に見つかるとは思わないでね〜』って声を大にして言いたい物ばかり。(まあ、当店のお品はすべてがその趣旨で集められた絨毯ですが…)

表面的なデザインや色、産地、時代を語り、そのような絨毯を揃えるだけなら簡単なんですがね。

 

その違いを実際に見て、触れて、感じて確かめていただければ、とても嬉しいです。

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